大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)872号 判決 1953年9月01日

本籍並びに住居

茨城県稲敷郡大宮村大字宮渕二九一八番地

農業

菅野由雄

明治二九年五月一〇日生

本籍並びに住居

同県同郡同村大字宮渕七三番地

農業

鴻巣春次

明治三六年二月二五日生

本籍並びに住居

同県同郡同村大字大徳四五八番地

農業

平野甚一

明治三一年一二月二〇日生

本籍並びに住居

同県同郡同村大字佐沼一一四〇〇番地

農業

治助こと石井次助

明治三五年三月二〇日生

本籍並びに住居

同県同郡同村大字大徳三五七番地

農業

関口仲次

明治二一年八月一八日生

右の者等に対する食糧管理法違反被告事件について昭和二六年一二月一七日東京高等裁判所の言渡した判決に対し原審弁護人宮代徹から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決を棄却する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理由

弁護人宮代徹の上告趣意第一点は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。同第二点は憲法違反を云うけれども、その実質は刑訴四一一条に該当する事由のあることを主張するに帰し、適法な上告理由にあたらない。

しかし、記録を精査するに、本件被告人等の昭和二四年度産米の実収高(雑穀を含む)が各被告人に対する判示提出割当数量以上であつたと認めるに足る資料はなく、却つて控訴趣意の記述する如く風水害等のため右割当数量に到底及ばなかつたのではないかと疑わしめるに十分である(被告人平野甚一の検察事務官に対する供述調書には同被告人の同年度産の米及び雑穀は同被告人に対する判示供出割当数量を僅かに超える実収高があつた旨の供述記載があるけれども、同供述調書は本件において証拠とされていない)。ところで本件における判示供出割当数量の如く食糧確保臨時措置法八条の変更決定によつて補正された数量であつても、それが同年度における米麦等の実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については供出違反罪は成立しないと解するのが相当である(昭和二三年(れ)第一七二四号、同二六年七月一八日大法廷判決=集五巻八号一四六五頁参照)。しかるに、第一審判決及び量刑不当を理由としこれを破棄し、自判した原判決は判示供出割当数量に対する不供出分の全部について被告人等を供出違反罪に問擬しているのであつて、被告人等の前記実収高について考慮を払つたと認むべき形跡がないのであるから、この点において第一審判決及び原判決には審理不尽の違法があるかまたは法律の解釈適用を誤つた違法があるものといわなければならない。そして、右の違法は原判決に影響を及ぼすべきものであり、且つこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから刑訴四一一条一号、四一三条に則り裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

この公判期日には検察官吉河光貞が出席した。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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